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「新学術領域研究」交替劇:研究項目A01

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研究組織
代表者
米田:東京大学・大学院新領域創成科学研究科・准教授・人類学・年代学;統括・年代学的検討
研究分担者
阿部彩子:東京大学・大気海洋研究所・准教授・気候力学;気候モデル
小口:東京大学・空間情報研究センター・教授・地形学;統合情報システム(GIS)構築
川幡穂高:東京大学・大気海洋研究所・教授
洋久:国際日本文化研究センター・准教授・地理情報工学;統合情報システム(GIS)構築
丸川雄三:国立情報科学研究所・特任准教授・連想情報学;統合情報システム(GIS)構築
連携研究者
横山祐典:東京大学・大気海洋研究所・准教授
研究協力者
大森貴之:名古屋大学・環境学研究科地球環境科学専攻・博士課程・年代科学
マーク・ディアブ:東京大学・新領域創成科学研究科・博士課程・動物考古学
永利:東京大学・大気海洋研究所・特任研究員・気候力学;気候モデル
近藤康久:東京工業大学・大学院情報理工学研究科・日本学術振興会特任研究員・GIS考古学;データベース作成
海外共同研究者
Rania Bou Kheir: レバノン・レバノン大学・GIS研究所
Tezer M Esat:オーストラリア
Masa Kageyama:フランス・気候環境学研究所
Gilles Ramstein:フランス・気候環境学研究所
全体研究計画(2010―2014)
本班は、交替期(ここでは約20万年前から3万年前とする)における旧人・新人遺跡の時間的・空間的分布状況を復元するとともに、遺跡の対峙していた時代状況、具体的には気候条件や生態環境を高精度に復元する。そして、遺跡の時空分布と環境変動パタンの関連性の分析を通して、環境に対する両者の適応の違いを実証的に明らかにすることで、新人を取り巻く環境の時空変化がその学習能力の進化を促したとするB01班の理論モデルの妥当性の検証に資する実データを提示する。そのために、特に交替期における環境の時空変化と、学習能力の唯一物証である考古学的証拠、とりわけ現代的行動(革新的技術や装飾品等)の出現・分布拡大との関係性を分析する。
本班は、交替期(ここでは約20万年前から3万年前とする)における旧人・新人遺跡の時間的・空間的分布状況を復元するとともに、遺跡の対峙していた時代状況、具体的には気候条件や生態環境を高精度に復元する。そして、遺跡の時空分布と環境変動パタンの関連性の分析を通して、環境に対する両者の適応の違いを実証的に明らかにすることで、新人を取り巻く環境の時空変化がその学習能力の進化を促したとするB01班の理論モデルの妥当性の検証に資する実データを提示する。そのために、特に交替期における環境の時空変化と、学習能力の唯一物証である考古学的証拠、とりわけ現代的行動(革新的技術や装飾品等)の出現・分布拡大との関係性を分析する。
(1)旧人・新人の交替劇に関して、欧州では新人拡散と旧人絶滅に着目した遺跡年代の見直しや、詳細な古気候・古生態環境の復元が行われているが、他の地域ではデータ集成が十分ではない。そこで、データ集成が不十分なアフリカ・西アジア一帯に特に留意して、交替劇はどこで、いつ、どのような経過をたどって進行したか、言い替えれば、交替劇に関する記述的部分の顕在化に欠かせない遺跡の時空分布の詳細重層図を作成する。5年間の間に、アフリカおよびユーラシア西半の地域について、旧人・新人の遺跡について報告されている様々な理化学年代を、その試料選択・前処理方法・測定方法・続成作用(汚染)評価方法・データ解析などについて、その妥当性・信頼性を点検・評価し、GISを用いてデータベース化することで旧人・新人の分布変動を詳細に復元する。
(2)旧人・新人が経験した環境変化の様態を明らかにするために、交替期(約20万年前から3万年前)における気候条件の時空変動を、気候シミュレーションを用いて古気候復元図を約1万年間隔で重層的に作成することで復元する。具体的には、東京大学と国立環境研究所が共同で、地球温暖化の将来予測のために開発した気候シミュレーションモデルを、古気候復元のために応用する。これをGISを用いて旧人・新人の遺跡や現代的行動の考古学的証拠の時空分布、生態環境の情報を含む古環境時系列データと同じ地図上に統合し、その関連性を検討する。その議論をフィードバックして、旧人・新人の学習能力に関係すると考えられる時空間の古気候情報を詳細に重層化していく予定である。
(3)さらに、重層的な古気候復元図の間をつなぐための情報として、各地における継時的な環境変動や急激な環境変動イベントの有無について、地球化学的手法を用いた古環境時系列データから検証する。これらの情報から、古気候シミュレーションでは詳細な復元が容易ではない、急激な気候変動イベント(ダンスガード・オシュガー・サイクルやハインリッヒ・イベントなど)に関する各地の状況を読み解くことが可能となる。これら2つの情報を統合することで、アフリカ・ユーラシア西半を中心に、20万年から3万年前の環境の時空変化を詳細復元することを目標とする。
(4)地理情報システム(GIS)に基づいて、以上の旧人・新人遺跡および現代的行動の理化学年代データに関する時空分布データと、古気候・古環境データを有機的に結合した情報環境を創出し、両者の関係性についてGISを用いた統計的手法によって解析することによって、環境変動に対する両者の行動パタンの違いを実証的に明らかにする。そして、A01班との協働作業を通して、環境変化に対する適応行動に際してどのような技術・社会システムが介在しているかを明らかにし、B01班の理論的根拠の検証データの充実をはかる。
2010年度研究実施計画
(1)旧人・新人の分布と現代的行動の拡散に関する年代データの集成
現代的な行動の考古学的証拠を中心に理化学年代データの文献調査を開始する。特に、欧州を中心に先行研究がある約6~3万年前の時期を対象に、西アジア・欧州地域を中心に調査を行う。とくに、近年報告が増加している、現代的行動に関する年代データに留意する。また、次年度以降にアフリカおよびユーラシア西半全域に調査域を拡大するにあたって使用する、年代データ評価基準を確立する。
(2)古気候復元図の作成
全球気候モデルを用いたシミュレーション実験を行い、約6~3万年前を対象に古気候図を作成する。まず、200kmメッシュの全球復元図を作成し、アフリカとユーラシア西半について、GIS環境作出のための基礎情報とする。さらに、理化学年代および古環境時系列データとの情報統合の過程で、より詳細な検討が必要となる地域や時間についての条件設定(時間精度や空間精度など)を決定する。
(3)古環境時系列データの集成
約6~3万年前の西アジアと欧州を中心に古環境データを網羅的に集成する。各種古環境プロキシについて、古環境データしての妥当性を検討し、旧人・新人を取り巻く生息環境(気候条件、動物相、植物相等)への変換方法についての検討を行う。
(4)GISによる情報環境の創出
各分担者から提供が予定されている理化学年代データ、古気候復元図、各種の古環境時系列データを、一元的に管理するためのデータベースの構築を開始する。他班の研究者が直感的に利用しやすいインターフェースについて、プロトタイプを作成する。
(1)旧人・新人の分布に関する年代データの集成 近年、数多く報告されている現代的な行動に関する報告について、その特徴と遺跡および遺物の年代測定結果に関して、学術雑誌を中心に文献調査する。また、新たに報告された理化学年代についての集成を開始する。今年度は、古気候分布図の作成にあわせて、西アジア、アフリカ地域を中心に、6~3万年前の遺跡について、これまでに報告されている理化学年代を集成する。この文献調査は、Nature、Science、PNASなどの総合誌および、Journal of Human Evolution、Journal of Archaeological Science、Radiocarbon、Archaeometory、Antiquity、Quaternary Science Review、International Journal of Osteoarchaeologyなどの専門誌を対象とする。また、Web of Scienceなどのデータベースを使用することで、網羅的なリストを作成する。報告書・モノグラフなどでの報告については、A01班と協働して、必要な情報を収集できる体制を整える。抽出された理化学年代データについて、その信頼性を評価するために必要な評価項目について、放射性炭素や各種ルミネッセンス測定などの専門家を交えて、国際研究集会で検討する。
(2)古気候復元図の作成
全球気候モデルを用いた古気候図の作成を、6~3万年前を対象に作成する。この時期は、とくにダンスガード・オシュガーサイクル(DOサイクル)等の急激な気候変動が多い時期にあたるため、①2万年前の最終氷期最盛期、②DOサイクルの温暖期、③DOサイクルの寒冷期の3つのフェーズについて、まずは200kmメッシュの古気候図を作成する。今回利用する全球気候モデルの古気候復元への適応方法の妥当性を検証するために、旧人の絶滅に関して作成された欧州の古気候復元図と、本研究の成果物である古気候復元図を対比する。また、地球化学分野で報告されている古環境時系列データとの対比などで、方法論の妥当性について検討する。
(3)古環境時系列データの集成
古環境復元で基礎となる海水面や表層環境のプロキシ(有孔虫や炭酸塩の酸素同位体比、微量金属濃度変化、有機物同位体比変化など)について、Nature, Science はもとより、Quaternary Science Reviews, Quaternary Research, Palaeogeography Palaeoclimatology Palaeoecology, Global and Planetary Changes, Paleoceanography, GEOLOGYなどを対象としてデータを集成する。また、Web of Scienceなどのデータベースを使用することで、網羅的なリストを作成する。初年度は、古気候復元図を作成する予定である6~3万年前の時期に特に着目して、西アジア・欧州地域を中心にデータを収集し、古気候復元図の正確性についての評価を行う。また、古環境データを復元するためのプロキシの精度検討を、文献調査を基に行い、国際研究会においてその妥当性を議論する。また、海外研究協力者や公募研究を通じて、考古遺跡から出土した動物遺存体の情報を生態環境データとして集成し、古環境プロキシデータとの関係について検討する計画である。
(4)GISによる情報環境の創出
各分担者から提供が予定されている気候復元図、理化学年代データ、各種古環境プロキシをとりまとめて管理するためのデータベースの構築を開始する。また、A01班が集成する考古遺跡データについても、データベースを統合することができるように、データ抽出項目などを相談する。初期段階ではサーバを立ち上げ、基本的な地図情報(デジタル標高モデル,行政界,河川など)を入力し、各分担者からデータが提供された段階で、それらも入力していく。また、研究者向けにデータの分布図を提供するマップサーバを立ち上げる。これらの作業の際には,適切な投影法や地図表現に関する検討も行う。また、古気候復元図の高精度化に資するために、現在の気候データと比較検討するための、衛星データなどによる植生情報をGIS化し提供する計画である。これによって、気温・降水量などの気候条件から詳細の生態環境データを復元することが可能となり、旧人・新人が直面した時代状況をより具体的に記述することをめざす。

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